再生ペレットに切り替えたら、成形が安定しなくなった。
黒点が出る、シルバーが出る、ロットが変わるたびに条件を振り直している。
そういう話を、独立してから本当によく聞くようになりました。
はじめまして、長谷川遼と申します。
大学で高分子材料をやったあと、中堅の樹脂成形メーカーに13年おりました。
後半の6年は資材調達と品質保証を兼務していて、再生材の品質トラブルには何度も泣かされた側の人間です。
2021年に独立して、いまは中小の製造業さん向けに再生材の調達支援をしています。
年間20社ほど現場を回っていると、同じ悩みが違う工場で繰り返されているのが見えてきます。
そして、それらの原因を追いかけていくと、行き着く先はだいたい同じ場所です。
成形機でも、乾燥機でも、金型でもありません。
先に結論を書いてしまうと、溶かすより前の工程です。
この記事では、再生ペレットで起きるトラブルを類型に分けたうえで、なぜ真因が上流にあると言えるのかを、公的研究機関の実験データとJIS規格を根拠に説明していきます。
そのうえで、仕入れ先を選ぶときに何を見ればいいのかまで落とし込みます。
なお、タイトルの「8割」は私の現場感覚であって、統計として裏づけられた数字ではありません。
そこは正直に書いておきます。
「材料が悪い」で止まると、次のロットでも同じことが起きます
再生材でトラブルが出たとき、現場で最初に出てくる言葉はだいたい決まっています。
「やっぱり再生材はダメですね」
気持ちはよく分かります。
私も現役のころ、社内でさんざん言いました。
ただ、この結論には致命的な弱点があります。
再現性のある改善につながらないのです。
「再生材だから」で止めてしまうと、打てる手は「バージン材に戻す」か「歩留まりを諦める」の二択しか残りません。
仕入れ先を変えても、同じことが起きる可能性が高いままです。
そもそも、いまは戻るという選択肢が取りにくくなってきています。
2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法は、3R(Reduce・Reuse・Recycle)に加えて「Renewable」、つまり再生素材やバイオマス素材への切り替えを基本原則に据えました。
制度の全体像は環境省のプラスチック資源循環特設サイトにまとまっています。
さらに2026年4月1日には、改正資源有効利用促進法が施行されました。
容器包装、家電4品目、自動車といった特定の製品分野について、再生資源の利用に関する計画の提出と定期報告が事業者に求められる方向です。
つまり、川下から「再生材を何パーセント使っていますか」と聞かれる場面が確実に増えます。
「使ってみたけどダメでした」では、もう答えとして通らなくなりつつあるということです。
だからこそ、原因をきちんと切り分ける必要があります。
再生ペレットで実際に起きるトラブルを、まず7つに分けます
私が現場で相談を受けたものを整理すると、だいたい次の7つに収まります。
- 異物混入・異樹脂の混入(コンタミネーション)
- 熱履歴による物性劣化、とくに衝撃強さの低下
- ロット間のMFRばらつきによる成形条件の振れ
- 吸湿による銀条(シルバーストリーク)や加水分解
- 由来の分からない充填材・難燃剤の混入
- 色ブレ、黒点、ゲル、フィッシュアイ
- 臭気
このうち、現場が最初に疑うのは2番目の「熱履歴」です。
一度溶かして固めた材料をもう一度溶かすのだから、劣化して当然だろう、と。
私も長らくそう思っていました。
ところが、この直感を真正面から否定するデータが出ています。
見た目が同じでも、中身の履歴はまったく違う
その前に、ひとつ押さえておきたいことがあります。
再生ペレットは、袋に入ってしまえばどれも同じ粒に見えます。
色も揃っていて、形も整っている。
しかし、その粒がどこで発生した廃材由来なのか、何回熱を受けているのか、どんな添加剤が入っていたのかは、外観からは一切分かりません。
バージン材との決定的な違いはここです。
バージン材は「作られたもの」ですが、再生材は「集められたもの」なのです。
集めた時点でどれだけ素性が揃っていたか。
これが、後工程で何をしても取り返せない差になります。
熱履歴が主犯だと思っていたら、実験データに否定されました
三重県工業研究所が2024年に公表した研究報告に、非常に示唆的なデータがあります。
ポリプロピレンとポリエチレンを1対1で混合した材料を、押出混練からペレット造粒まで最大10回繰り返し、物性の変化を追った実験です。
報告書はポリオレフィン樹脂のリサイクルが物性に及ぼす影響として公開されています。
結果を抜き出すと、こうなります。
| 評価項目 | 未処理(0回) | 10回繰り返し後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 引張強さ | 33 MPa | 33 MPa | ほぼ変化なし |
| 曲げ強さ | 40.5 MPa | 37.7 MPa | わずかに低下 |
| シャルピー衝撃強さ | 2.7 kJ/m² | 2.0 kJ/m² | 有意に低下 |
| MFR(230℃・2.16kg) | 11 g/10min | 14 g/10min | 約30%増加 |
10回です。
実務でここまで熱履歴を重ねる材料は、そう多くありません。
それでも引張強さは変わっていません。
曲げ強さも、大崩れというレベルではありません。
FT-IRやTGAでも、酸化劣化を示す明確な兆候は見られなかったとされています。
明確に落ちたのは衝撃強さだけでした。
一方で、MFRは約30%上がっています。
分子鎖が切れて短くなり、流れやすくなったということです。
報告書自身も、MFRが上がることで押出成形条件が変わることが想定され、条件が定まるまで歩留まりの問題が生じ得ると指摘しています。
ここから読み取れることは2つあります。
ひとつは、成形条件が合わずに苦しんでいるケースでは、熱履歴によるMFR変化が効いている可能性が高いということ。
これは条件出しで対応できる領域です。
もうひとつは、現場で起きている「割れる」「クレームになる」レベルの品質崩れを、熱履歴だけで説明するのは無理があるということです。
10回溶かしても引張強さが落ちない材料が、たった1回か2回の再生で使いものにならなくなるとしたら、原因は別にあると考えるほうが自然です。
同じ報告書の冒頭には、リサイクルペレットの物性が劣る理由として「分別しきれなかった不純物の影響」が挙げられています。
私の実感とも、ここは完全に一致します。
原因の大半は、溶かす前の工程に埋まっています
では、その「別のところ」とはどこか。
回収、選別、洗浄、粉砕。
つまり、ペレットになる前の工程です。
これは私の持論というだけの話ではありません。
日本の産業規格が、そういう構成になっています。
JIS Q 9091が管理対象にしている工程
2016年に制定されたJIS Q 9091は、「品質マネジメントシステム-プラスチック再生材料-事業プロセスパフォーマンスに関する指針」という規格です。
自動車メーカー、家電メーカー、それらの部品メーカー、そしてこれらに再生材料を供給する事業者を適用範囲としています。
この規格が対象としている事業プロセスが、まさに廃プラスチックの回収、選別、分解、洗浄、粉砕です。
そして品質管理項目として挙げられているのが、次のようなものです。
- 禁止物質の含有管理
- トレーサビリティ管理
- マテリアルバランス管理
- 異物除去
購入伝票、計量伝票、製造記録、検査記録、禁止物質の分析結果まで文書化し、追跡可能な状態にしておくことが求められています。
規格の詳細はJIS Q 9091:2016の規格本文で確認できます。
注目していただきたいのは、この規格が押出条件やスクリュー回転数の話をほとんどしていないことです。
再生材の品質は、どこから来た材料をどう管理したかで決まる。
公的規格そのものが、そういう前提で組み立てられているわけです。
「素性が分からない」が具体的に何を引き起こすか
上流の管理が甘いと、現場では次のような形で表面化します。
異樹脂が数パーセント混ざっただけで、相溶しない界面が弱点になり、衝撃で割れます。
紙ラベルやシールの破片が混ざれば、そのまま黒点になります。
厄介なのは充填材です。
再生材の分析では、バージン材では検出されない無機元素が検出され、灰分が多く出ることがあります。
元の製品に配合されていたフィラーが残っているためです。
ガラス繊維が何パーセント入っているか分からない材料は、物性も収縮率も燃焼特性も予測できません。
図面公差を守れないのは当たり前ですし、難燃グレードが必要な部品では致命傷になります。
そして、これらはいずれも溶かした後では取り除けません。
スクリーンチェンジャーで捕まえられるのは、あくまで固形の異物までです。
分子レベルで混ざってしまった異樹脂や、練り込まれた充填材は、もう分離できないのです。
だから、上流なのです。
素性が分かる材料かどうかを、仕入れ先で見分ける
ここまで読んでいただいた方は、次に何を見ればいいか、もう見当がついていると思います。
チェックすべきは、ペレットのスペック表ではありません。
その材料がどこから来たのかを、相手が説明できるかです。
私が仕入れ先を見るときに確認しているのは、次のような点です。
- 原料がどこから発生した廃材なのか(工場内か、使用済み製品か)を説明できるか
- 取扱樹脂の種類が公開されていて、こちらの要求グレードと合っているか
- 選別と洗浄の工程を持っているか、それとも粉砕して溶かすだけか
- ロットごとの記録が残り、後から追跡できる仕組みがあるか
- 第三者認証を取得しているか、取得しているならその範囲はどこまでか
PIR材とPCR材の違いは、素性の分かりやすさの違いです
再生材の世界では、PIR材とPCR材という言い方をよくします。
厳密に言うと、ISO 14021が定義しているのは「プレコンシューマ材料」と「ポストコンシューマ材料」の2区分です。
前者は製造工程の途中で廃棄物の流れから外された材料、後者は家庭や事業所でエンドユーザーが使い終わった材料を指します。
市場でPIR材と呼ばれているのは、おおむね前者のことです。
品質という観点で言えば、この違いは決定的です。
工場から出た端材や成形不良品は、何の樹脂で、どのグレードで、どういう配合だったかが分かっているのです。
一方、使用済み製品を回収した材料は、選別と分析にコストをかけないと素性が特定できません。
PCR材が悪いという話ではなく、必要な手間の量がまったく違うということです。
自社の要求品質に対して、仕入れ先がどちら寄りの材料を扱っているのか。
これは最初に確認しておくべき項目だと思います。
認証を見るときは、含有率よりトレーサビリティを見る
再生材まわりで最近よく目にするのが、GRS(Global Recycled Standard)認証です。
GRSは、Textile Exchangeという国際的な非営利団体が運営する認証制度です。
繊維・アパレル分野が出発点ですが、包装やプラスチック、消費財にも適用されます。
リサイクル材を20%以上含む製品を対象に、加工から製造、包装、流通までサプライチェーン全体を対象とし、環境要件、社会的要件、化学物質規制、そしてチェーン・オブ・カストディ(加工流通過程の管理)を審査する仕組みです。
制度の概要は認証機関であるIntertekの解説ページにまとまっています。
私がGRSを評価しているのは、含有率の数字そのものではありません。
材料がどこから来たかを追跡できる状態にあることを、第三者が監査しているという点です。
ここまで書いてきたとおり、再生ペレットの品質を左右するのは上流のトレーサビリティです。
それを外部の目で確認している会社かどうかは、判断材料としてかなり大きいと考えています。
たとえば群馬県太田市で廃プラスチックのマテリアルリサイクルを手がける日本保利化成株式会社の資源循環への取り組みを紹介した記事では、2025年4月にGRS認証を取得したことと、汎用プラスチックからスーパーエンプラまで幅広い樹脂を扱っている点が紹介されています。
同社の公式サイトを見ると、買取対象を工業系排出のPIR廃材(一部PCR材あり)と明記しています。
先ほどの整理で言えば、素性が特定しやすい材料を主軸に据えているということになります。
こういう情報が公開されているかどうか自体が、判断材料になります。
逆に言えば、原料の出どころを聞いても曖昧な答えしか返ってこない相手は、私は候補から外しています。
受入検査で最低限おさえたい項目
仕入れ先を選んだあとも、丸投げにはできません。
ロット間のばらつきは、どこから買っても必ず出るものだと考えておくべきです。
参考までに、再生材の受入検査で一般的に使われる項目を整理しておきます。
| 項目 | 分かること | 優先度の目安 |
|---|---|---|
| MFR(MVR) | 流動性、分子量の傾向。成形条件への影響 | 最優先。ロット全数を推奨 |
| 灰分 | 無機フィラーの残存量。由来不明の充填材の検知 | 高い。新規仕入れ先では必須 |
| 水分率 | 吸湿状態。シルバーや加水分解のリスク | 高い。PA・PC・PET・PBTでは必須 |
| 密度 | 異樹脂混入の簡易スクリーニング | 中程度 |
| 引張・曲げ特性 | 設計値との照合 | 中程度。用途による |
| 衝撃強さ | 熱履歴の影響が最も出やすい項目 | 用途によっては最優先 |
| FT-IR | 異樹脂の同定、酸化劣化の評価 | トラブル発生時 |
このうち、まず入れるべきはMFRだと思っています。
理由は単純で、成形条件の振れに直結するからです。
MFRが低すぎればショートショット、高すぎればバリになります。
入荷ごとにMFRを測っておけば、条件を振り直す前に見当がつきます。
灰分も、新しい仕入れ先を評価する段階では必ず入れてください。
カタログに書かれていないフィラーが入っていないかどうかは、これで分かります。
なお、再生PPではロット間のMFRばらつきが±15〜30%程度に達するという指摘が業界メディアで見られます。
出典が成形加工関連企業のコラムであり、学術的な裏づけは確認できていませんので数字そのものは参考程度にしていただきたいのですが、バージン材と同じ感覚で受け入れると痛い目を見る、という方向性は私の実感とも合います。
それでも再生材を使う理由
ここまで課題の話ばかりしてきたので、最後に前向きな話も書いておきます。
一般社団法人プラスチック循環利用協会が2025年12月に公表した資料によると、2024年の日本の廃プラスチック総排出量は911万トン、有効利用率は89%とされています。
数字だけ見ると優秀に思えます。
ところが内訳を見ると、その67%はサーマルリサイクル、つまり燃やして熱を回収している分です。
材料としてもう一度使われるマテリアルリサイクルは、20%程度にとどまります。
詳しい数値は協会のプラスチックのマテリアルフロー図で確認できます。
裏を返せば、材料として回せる余地はまだ大きく残っているということです。
そして、扱いにくいとされてきた領域を引き受ける会社も出てきています。
メッキ品や金属インサート成型品のような複合素材、ガラス繊維入りや難燃材入りといった、これまで再生が難しいとされてきた資材を対象に含めている事業者も実際にあります。
こういう会社が増えるほど、選択肢は広がります。
5年前と比べれば、調達側から見た景色はかなり変わったというのが正直な感想です。
まとめ
長くなりましたので、要点を整理します。
- 再生ペレットのトラブルを「再生材だから」で片付けると、改善が止まる
- 三重県工業研究所の実験では、10回繰り返し再生しても引張強さはほぼ変わらず、明確に落ちたのは衝撃強さのみだった
- 一方でMFRは約30%上昇しており、成形条件が合わない問題はここで説明できる部分が大きい
- 熱履歴だけでは説明のつかない品質崩れの真因は、回収・選別・洗浄・粉砕という上流工程にある
- JIS Q 9091も、再生材の品質管理としてトレーサビリティや異物除去、禁止物質管理を規定している
- 溶かした後では、混ざった異樹脂や充填材は取り除けない
- だから仕入れ先を選ぶときは、スペック表より「原料の出どころを説明できるか」を見る
- 受入検査は、まずMFRと灰分と水分率から始める
再生材は、扱い方さえ間違えなければ十分に使える材料です。
私が現役のころに苦しんだ原因の多くは、いま振り返れば材料そのものではなく、素性の分からないものを素性の分からないまま買っていたことにありました。
いま再生ペレットで困っている方は、成形条件をいじる前に、一度だけ仕入れ先に聞いてみてください。
この材料は、どこから来たものですか。
その質問にきちんと答えられる相手かどうかで、この先の苦労はずいぶん変わるはずです。
